いばらきセレクション125とは

県民へのメッセージ

県民へのメッセージ―茨城新聞社長 小田部卓

 

 「いばらきセレクション125」は茨城新聞が今年、創刊125周年を迎えたことを記念して実施しました。創刊記念事業は通常、創刊日(7月5日)に発表するのが常ですが、「あくまで茨城県民のための事業」との趣旨から、「県民の日」の11月13日に発表することとしました。少子高齢化に歯止めがかからず、地方創生が時代の大きな課題となる中、「地方が輝きを取り戻す原点は住民の郷土への誇り」との確信をこの事業に込めました。いばらきセレクションに選定された「茨城の宝」を通して県民にはぜひとも、自らが生まれ育ち、あるいは日々の暮らしをおくる郷土への自信と誇り、愛着、未来への発展可能性などについて、思いを新たにしてほしいと願います。

 いばらきセレクションへの投票は小中学生を対象にした子ども票と高校生以上を対象にした一般票に分け、子ども票は「自分が住む市町村の宝」、一般票では「茨城の宝」をそれぞれ自由記載してもらいました。あらかじめ用意した候補の一覧から選んでもらうというような形ではなく、自由な発想で書いてもらったのは、限られた地域や人々にしか知られていない地域財産・資源を掘り起こしたいと考えたからです。

そのため、集計には昨年11月から今年8月まで10カ月を要しました。一見違って見える項目をどういった基準でくくるか、逆に同じように見えるものの違いをどう見極めるか、一つひとつケースバイケースで判断しました。仕分けには多くの時間と労力を要しましたが、おかげで投票項目をつぶさに調べることができ、結果として、手づくり感あふれる事業となりました。

選定に当たった選考委員会は、喧々諤々(けんけんがくがく)の議論を重ねました。5人の選考委員が投票数を重視しながら、「全国的に見たときの貴重性」「将来的な成長性」「豊かな物語性」などの視点も加味して意見を戦わせました。そして、意見が分かれそうになったとき、選考委員会として最も大切にし、最後のよりどころとしたのは「県民として誇れるものかどうか」という価値判断です。それゆえ、いばらきセレクションには「茨城の誇り」が凝縮されているのです。

125の宝は自然や食、観光拠点や身近な施設、伝統工芸や近代産業、伝説と科学など種々雑多なように見えますが、詳しく見つめてもらえば、ある種の統一性があることも理解してもらえると思います。例えば、歴史の流れという点で見れば、「陸平貝塚」から始まって「茨城の古墳」「常陸国風土記」「佐竹寺と佐竹の歴史遺産」「弘道館と水戸学」「日立の産業遺産」と縄文から古代、中世、近代、現代までを包摂しています。「平将門」と「水戸徳川家」によっては、本県が武士社会の発祥であり、終焉の地である物語性を感じてもらえるのではないでしょうか。私たちの郷土は何と豊かな歴史をたどってきたことか。これもまた、県民が誇りとしていいでしょう。

惜しむらくは、125項目しか選定できなかったということです。いばらきセレクションに選ばれなかったからといって、価値を軽視したというわけではありません。選外の候補にも数えきれないほどの宝の原石があります。それを磨くのは、官民挙げての仕事であり、県民一人ひとりの努力です。茨城新聞社はその取り組みを応援します。